【データ有】金利上昇局面でも株式投資を続けるべきである理由
「金利上昇懸念がある中でも株式運用は続けるべきです!」
※本記事はイラストだけの流し見で理解できる構成となっております。
「債券利回りが上昇し、株価は下落」こんなニュースを聞くことはよくあります。
事実として、FRBや日銀の利上げといった金利上昇懸念は株価に大きな影響を与えます。
では金利上昇局面では、利上げの前手に株式を売却しておいた方が良いのでしょうか。
この答えを得るために、今回は米国債の値動きとS&P500の株価変動の関係について、21年分のデータを解析しました。
その結果、金利上昇局面でも株式投資を続けるべきという結論を得ました。
実際のデータをイラストで紹介しながら見ていきましょう。
目次
債券利回り変化率と株価変化率の相関解析
まず初めに、債券利回り変化率と株価の相関について、データ解析を行っていきます。
データ解析の概要
データ解析では、21世紀に入ってからの米国10年債の利回りと、主要株価指数であるS&P500のデータを活用していきます。
米国10年債の長期利回り推移
米国10年債の利回りの長期推移は下記の通りです。
債券利回りは2000年以降右肩下がりで、2000年の利回り7%から、2021年では1%前後まで大幅に下落しています。
次に債券利回りの変化率を計算した結果を示します。
米国10年債の利回り変化率
利回り変化率は毎月初日の債券利回りデータから前月比を計算し、月間変化率としました。
2000年からの米国10年債の利回り月間変化率は下記の通りです。
債券利回り変化率は0を中心に分布していますが、リーマンショックやコロナショックなどの大きな株価変動が起こる際に利回りは上下に大きく変化している様子が分かります。
さて、次にこちらのデータを用いて、債券利回り変化率とS&P500の株価変化率の相関関係について解析を行いました。
債券利回りが上昇するとき、株価も上昇する
下の図では、同じ月の債券利回りの変化率と、S&P500の株価変化率の関係を示したものです。(データのサンプル数は260か月分です。)
データを見ていただくと、図の右側の債券利回りが上昇する月にはS&P500の株価も上昇している傾向が見て取れます。
また図の左側の債券利回りが下落する月にはS&P500の株価も下落している傾向があります。
債券利回りとS&P500株価の相関係数は0.3となっており、統計的には弱い正の相関があることが示されました。
つまり債券利回りが上がるとき、株式価値も上がる傾向がある、という関係性が明らかとなりました。
「金利上昇は株価下落を引き起こす」と言われることが多いですが、ここ20年以上のデータを長期的に見てみると、そのセオリーは当てはまらない、というのが今回のデータからわかります。
次に、実際に債券利回りが上昇した月・下落した月をピックアップした時、株価はどのように変化したのかデータをまとめてみました。
債券利回りが上昇する月・下落する月の株価変動
データ解析の概要
こちらの解析では債券利回りが上昇した月・下落した月において、S&P500の株価がどのように動いたのかを明らかにしていきます。
下の図は月ごとの債券利回りの変動率を示したものです。
今回の解析では初めに、利回り変動率に着目して、過去260か月のうち、①利回り上昇率が高かった月Top30と、②下落率が高かった月Top30、③その他の月、の3つに分けました。
その後①、②、③のそれぞれの月におけるS&P500の株価変動率の平均を計算し、債券利回りの変化と株式の関係について検討を行いました。
債券利回りが下落する月よりも、上昇する月に株価は上昇する
実際に3つの群に分けて株価変動率の平均を見た結果は下のようになりました。
S&P500の株価変動率は下記の通りでした。
①利回り上昇率が高かった月Top30:+2.62%
②下落率が高かった月Top30:-2.27%
③その他の月:+0.78%
本結果から、債券利回りが減少する月と比較をして、利回りが上昇する月ではS&P500の株価も上昇する傾向があることが明らかとなりました。
つまり金利上昇を気にして、株式を手放す必要はないですし、むしろ、過去20年を見る限り、債券利回りが上昇する月のS&P500への投資リターンはプラスになる傾向があると言えます。
また、金利上昇を気にして株を売ってしまうことで、税制上もネガティブな影響を与えてしまいます。
利上げ懸念が起こるたびに株式を売ってしまうことで、バイホールド戦略の利点である課税の繰り延べが行われず、パフォーマンスを低下させてしまう結果につながることも事実です※。
※詳細は下記記事参照
【初心者】バイホールド戦略、株を売らないことが投資リターンを高める理由 - Index Lab. インデックスラボ
本解析結果の注意点
最後に今回の結果の解釈について、大切な注意点です。
・債券利回りの変動率と株価変動率の両者は相関関係にあることが分かりましたが、今回の解析では因果関係を示してはいません。
この先、債券利回りが上昇するから、株価も上がる!と安直に結論付けられないのが投資の難しい点であると言えます。
・利回りと株価に相関があったとしても、それは絶対ではない。
利回りが上昇した月に株価も上昇する傾向はみられましたが、これは常に当てはまるわけではありません。
利回りが上昇する月であっても株価が下落することはあるため、リスクをとった運用をする場合には常に慎重な判断が必要です。
まとめ
今回は米国市場における、過去21年分の①債券利回りの変動率と②株価の変動率のデータをもとに、利回りと株価の関係について評価を行いました。
その結果、債券利回り変動率とS&P500株価変動率の間では正の相関がみられました。
つまり利回りが上昇する月では、株価も上昇する傾向があることが明らかとなりました。
実際に債券利回りが上昇した月Top30と、下落した月Top30で株式リターンの比較をした結果、利回りが上昇した月の方が平均して圧倒的に高いリターンをもたらしていたことが示されました。
以上から、直近の利上げ・債券利回りの上昇を気にして、株式を急いで売却する必要はないと判断できます。
投資リターンを高めるうえでは、可能な限り課税のタイミングを遅らせ、課税の繰り延べ効果を高めることが不可欠です。
市場動向に過度に反応せずに、長期投資を継続していくことが大切であると著者は考えます。
本記事が皆さまの良い投資に繋がれば幸いです。
【参考記事】
■利上げ局面における、セクターごとのパフォーマンスを本記事と同様に検証。
金利上昇時に有利なセクターを3種紹介!
■バイホールド戦略の重要性
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