【TECL長期投資が危険な理由】過去24年の長期シミュレーション結果
「TECLへの長期投資は本当にハイリターンをもたらすのか?」
「もしもTECLがITバブル、リーマンショックを経験していたらどうなるのか?」
※本記事はイラストだけの流し読みでも分かる内容となっています。
米国ハイテク企業に対して3倍レバレッジ運用を行うTECLは、ここ10年で大きなリターンをもたらしています。
チャートを見る限りは今後も大きなリターンが期待できるように思えますが、本当にそうでしょうか。
TECLの設定は2008年末であり、チャートからはリーマンショック後の上昇相場における値動きしか確認できません。
つまり、TECLのパフォーマンスは好調な期間だけを見ている可能性があります。
もしもリーマンショックの下落やITバブルの暴落を経験した時、どのような値動きをするのでしょうか。
本記事では、S&P500のテクノロジー・セレクト・セクター指数のデータを用いて、TECLの長期チャートシミュレーションを行いました。
本記事の構成は以下の通りです。
・妥当性検証:シミュレーション結果を実際のTECLの類似性を確認
・TECLが過去の大暴落でどのように値動きしたのか検証
・24年分のデータを用いて、運用年数ごとのリターン分布について検証
本記事でデータをまとめた結果、「私はTECLへの長期投資は絶対にすべきでない」と結論付けました。
目次
TECLシミュレーションの概要
TECLはS&P500テクノロジー・セレクト・セクター指数の三倍の値動きに連動しています。
そこで、この指数に投資をするETFのうち、最も歴史があるXLKのデータをもとにシミュレーションを行いました。
シミュレーションの方法
・XLKの過去データを取得
・毎日の終値ベースに値動きを計算
・この値動きを3倍したものをTECL値動きとして活用し、24年分のTECLシミュレーションを行う
(24年というのはXLKの設定が24年前だったためです。)
この方法で計算したTECLチャートが実際のTECLと合致しているのか、次に妥当性の検証を行いました。
妥当性検証:シミュレーションは正しいか?
下のグラフでは、XLKデータから算出したシミュレーション結果と、実際のTECLの価格変動の比較を行ったものを示しています。(10000$を投資した際の価格変化を見ています。)
赤で示したシミュレーションの結果は、青で示した実際のTECLの値動きを再現できていることが上の図から確認できます。
この結果から、今回のTECLシミュレーションの妥当性が確認できましたので、本結果を用いて、実際にTECLがリーマンショック・ITバブル崩壊をしたときにどのような値動きを示すのか検証を行いました。
TECLシミュレーション結果
ITバブル、リーマンショック当時のTECLの値動き
実際にTECLシミュレーションの長期シミュレーション結果を下に示します。
こちらでは1998年(XLKの設定年)時点で10000$を投資した際の値動きを示しています。
見ていただくと2000年に入る前のITバブルの影響で、TECLの価格は大きく上昇した一方、ITバブル崩壊とともに激しく値崩れしている様子が分かります。
ここで見落とせない点が、ITバブルの高値圏内でTECLに投資をした場合、2021年になってもいまだに含み損を抱えているという事実です。
つまり24年という長期運用をしても、レバレッジ運用の場合にはリターンがマイナスになりうることが本結果からわかります。
ちなみに、下の図は同指数に投資をする非レバレッジETFであるXLKの価格変動を見ています。
1998年にXLKに投資をした場合にはしっかりと右肩上がりのチャートを描いていることが分かります。
以上のデータからレバレッジをかけたことが原因で、リターンが大きくマイナスになっていたことが示されます。
TECLシミュレーションのデータについては、値動きが大きくチャートが見ずらいため、価格を対数表示にしたものが下の図です。
ITバブル崩壊、リーマンショックで大きく価格が暴落していることが確認できます。
それぞれの下落率は下記の通りです。
・ITバブル崩壊:最高値の58729$(2000年3月27日)から最安値73$(2002年10月9日)に暴落し、その下落率は99.88%となります。
・リーマンショック:直近の最高値は618$(2007年10月31日)から最安値33.8$(2009年3月9日)に暴落し、その下落率は94.53%となります。
・最悪のケース:ITバブルの高値58729$で掴んでしまった場合、リーマンショックの暴落時点で33.8$となり、99.94%暴落します。これは投資をしていた100万円が576円になることを意味しています。
この結果から、レバレッジをかけた運用は極めて危険であり、TECLを高値で掴むことは極めて危険であると言えます。
上昇相場だけを見てTECL投資を決めてはいけない
TECLはリーマンショック後に設定されているために、投資家が見ているチャートは下の図の青で囲った枠だけです。
確かにこの青枠で囲った領域内ではおおむね右肩上がりの高パフォーマンス銘柄のように見えます。
一方で、もっと前に設定がされていたら、先の例で見たように、99%を超えるような下落が起こっていたことは事実です。
TECLに長期投資をするのであれば、資産が100分の1になりうることを覚悟しながら運用していく必要があると言えます。
次に、このTECLシミュレーション結果を用いて、運用年数ごとのリターンがどのように分布しているのか検証を行いました。
運用年数ごとのTECL投資リターンの比較
1998年ー2021年の期間のうち、1年運用、3年運用、5年運用、10年運用、15年運用、20年運用を行ったときの、年率リターン分布を示したものが下の図です。
1年運用を行う場合にはリターンが大きくプラスになるときもあれば、大きくマイナスになるときもあります。
運用期間が長期になっていくとそのバラツキは次第に小さくなり安定してきます。
しかし、よく見ると平均リターンも低下していることが確認でき、実際に20年運用の結果を見てみると、その平均リターンはマイナスになっています。
つまり長期で運用をすることで運用パフォーマンスは低下していくことが分かります。
これはレバレッジをかけることにより、レンジ相場(ボックス相場)ではパフォーマンスが低下することや、暴落に対して極めて脆弱になるという欠点があるためだと推測できます※。
※レバレッジがなぜ暴落に弱いのか、下記記事でイラストを用いて解説しています。
以上のデータから、TECLは長期投資に向いた資産ではないと判断できます。
TECL投資家の中には「長期で持てばプラスになる」と考えている方も少なくはありませんが、実はTECLに長期投資をしたとしても、パフォーマンスがマイナスになる可能性があることは重大なリスクとして認識しておく必要があると言えます。
まとめ
本記事では過去の24年分のS&P500データを用いてSPXLのシミュレーションを行いました。
TECLの長期パフォーマンスを見ると、ITバブル崩壊やリーマンショックがあった2000年最初の10年のパフォーマンスは極めて低く、ITバブルの高値で買ってしまった場合、-99.9%を超える最悪の含み損を抱えることが明らかとなりました。
また、運用年ごとのリターン比較を行った結果、TECLに20年間投資をしても、平均パフォーマンスはマイナスになりうることが確認されました。
TECLは2008年の設定来、右肩上がりの美しいチャートを描いていますが、これはたまたまハイテク銘柄が好調であった2010年代だったからかもしれません。
TECLに投資をするのであれば、大きな暴落リスクも覚悟したうえで運用することが不可欠であると言えます。
【関連文献】
・SPXL長期シミュレーション
TECLシミュレーションと同様、SPXLについても長期チャートを作成し、パフォーマンスを検証しました。
・レバレッジリスク
レバレッジ最大のリスクは暴落に対して極めて脆弱であることです。その理由について、簡単なシミュレーションとイラストを用いて検証しました。
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