【重要】成長株投資の欠点:グロース銘柄なのに儲からない理由
「投資のリターンは企業の成長性できまる!」
「低成長の斜陽業界に投資をしても、リターンは見込めない。」
上の主張、実はどちらも間違っていることをご存じでしょうか。
成長の罠という言葉があります。
これはジェレミーシーゲル教授が自身の書『株式投資の未来』で紹介したフレーズであり、高い成長が見込める企業に投資をすることが、必ずしも高いリターンをもたらすわけではないことを意味しています。
むしろ、このような成長を追いかけた投資が低いリターンをもたらすリスクすらあることが知られています。
直感的には理解しがたいその事実に関して、今回は過去の事例とその原因について紹介いたします。
運用戦略を練るうえで不可欠な投資哲学と言えますので、ぜひご一読いただければと思います。
※本記事は『株式投資の未来』を参考に執筆しています。とても参考になる書籍ですので、最後に紹介いたします。
目次
成長銘柄への投資がローリターンをもたらした実例
意外に思えるかもしれませんが、成長銘柄への投資は、必ずしも高いリターンをもたらすとは限りません。
むしろ、成長銘柄や成長国への投資が、ローリターンをもたらした実例すらあります。
過去を振り返りながら、成長の罠の事例を紹介いたします。
成長セクターがハイリターンをもたらすとは限らない
シーゲル教授は自身の書『株式投資の未来』で過去の企業のリターンについて統計解析を行いました。
その結果、20世紀後半において、市場シェアを最も伸ばしたセクターは金融セクターであることを明らかにしました。
金融セクターの市場シェアは1957年の0.77%から2003年の20.6%へ、およそ27倍に急拡大したため、最も栄えたセクターであったといえます。
栄えたセクターがある一方、シェアを落としたセクターも当然あります。
それがエネルギーセクターで、同期間で21.6%から5.8%に、およそ4分の1にシェアを落としました。
このことから、産業の繁栄という観点では、金融セクターはエネルギーセクターを圧倒的にアウトパフォームしました。
しかしながら、投資リターンを見てみると話は変わります。
1957年から2003年にかけての47年間において、金融セクターの平均パフォーマンスは年率10.6%であったのに対して、エネルギーセクターではそれを超え、年率11.3%のパフォーマンスを示しました。
年率であらわすとその差が分かりにくいですが、仮に1957年に両セクターに1万円を投資した場合、金融セクターの場合、2003年には102万円になったのに対して、エネルギーセクターの場合は139万円となります。
シェアを落としたはずのエネルギーセクターは、金融セクターを30%以上トータルでアウトパフォームしました。
このように、成長セクターへの投資は必ずしも高いリターンをもたらすわけではないことを歴史は示しています。
成長国家がハイリターンをもたらすとは限らない
高い成長が低いリターンをもたらす例は、セクター間ではなく、国家間でも見られています。
中国とブラジルのGDP増加率に関して過去のデータを見てみましょう。
1992年から2003年の間でGDPの成長率は、累積ベースで中国は166%であった一方で、ブラジルの成長率は22%でした。
中国はブラジルと比較をして、圧倒的に大きな成長を実現しました。
一方で、投資リターンを見てみると状況は変わります。
同期間で中国に投資をした場合、そのパフォーマンスは-68%であった一方で、ブラジルに投資をした場合は+378%のリターンをもたらしています。
低成長であったブラジルの方が圧倒的にハイリターンをもたらしていました。
近年の株式市場を見てみても、同様のことは言えます。
例えば先進国と新興国を比較をすると、成長率については当然新興国が高い傾向である一方で、近年の投資リターンを見てみると先進国に投資をした方が高いリターンを得ることができていることはよく知られています。
つまり、高い経済成長をもたらした国に投資をしても、そのリターンは高くなるわけではないことを示します。
なぜこのようなことが起こるのか、その理由を説明いたします。
成長の罠の本質:期待が先行した株価形成
株価上昇の原因とは何か
投資のリターンが、企業や国家の成長により決まるのでなければ何で決まるのか。
その答えは下記のとおりです。(シーゲル教授の著書より原文引用)
投資のリターンは成長率そのものではなく、実際の成長率と投資家の期待の格差で決まる。
つまり、投資先を選ぶうえでは、その会社や産業の成長率そのものは重要ではなく、
大切なのは、その成長性が投資家のコンセンサスを超えるかどうか、という点であると言えます。
先の中国とブラジルの例で見てみると、中国は高い経済成長が期待されていましたが、それに応えられなかったために低いパフォーマンスを示しました。
その一方で、ブラジルに寄せられた期待はそれほど高くなかったため、期待以上の成長を実現することができました。
その結果、ブラジルの株価指数は上昇し、投資家は高いリターンを得ることができたと言えます。
成長株投資家が見落とす重大な欠点
成長株投資の欠点とは、成長するという期待が高すぎるために、いざ増益を実現したところで株価が上がらないリスクがあることです。
株式市場を見てきた投資家であれば、「良好な決算を発表した次の日、株価が大きく下落する」という現象を一度は経験したころがあると思います。
これはまさに高い期待に応えられなかったがために、売られてしまったことを示しています。
成長株特有の重大リスク
高い期待を受けている銘柄は、すでにかなり高い水準にまで株価が上昇している可能性があります。
既に値上がりしているという事実は、この先の値上がり余地の低下に直結します。
つまり、高まる期待がもたらす値上がり自体が、将来のリターンを押し下げる原因となるという皮肉な現象が、市場ではよく起こっています。
シーゲル教授の言う成長の罠とは、高すぎる期待が寄せられる成長銘柄が低いリターンをもたらすことを意味します。
株式のリターンは成長率そのものではなく、実際の成長率と投資家の期待の格差で決まる。
大いに期待されている企業は、その期待を超える利益を出して初めて、高いリターンを投資家にもたらします。
一方で、期待が小さい会社はその期待を超えることで、高いリターンを投資家にもたらします。
注目され熱狂に沸くセクターや国家に属する銘柄は割高な水準である可能性が高いです。
そこから得られるリターンは予想よりも低く、値下がりリスクは予想よりも高いかもしれません。
成長産業、成長国家だからと言って過度に期待し、過度に安堵するのは控えた方が良いと言えます。
まとめ
直感的に考えると、成長こそが株価上昇をもたらすと考えられます。
しかしながら、金融セクターとエネルギーセクター、あるいは中国とブラジルの実例で見てきたように、成長は必ずしも高いリターンをもたらすとは限りません。
むしろ、成長銘柄・成長国家に寄せられる高い期待が割高な価格形成を行い、その結果投資家に低いリターンをもたらすリスクがあります。
我々投資家が安定したリターンを築くためには、投資リターンの源泉はその企業の成長性そのものではなく、投資家の期待を超える成長ができるかどうかであることを肝に銘じる必要があると言えます。
今回の記事が皆さまの良い長期投資につながれば幸いです😊
✨参考文献✨
『株式投資の未来』ジェレミーシーゲル著:
成長の罠の存在を報告し、株式投資における配当の重要性を力説しています。莫大な過去のデータを紐解き、長期投資で勝利するためのポイントを明快に説明しています。私のお気に入りの一冊で、近日中にもういちど読み返します!
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