【4/27更新】バイデン氏のキャピタルゲイン増税が日本の個人投資家に与える影響
「バイデン大統領が提案するキャピタルゲイン税の増税とは?」
「キャピタルゲインの増税は日本の個人投資家にはどのような影響を与えるのか。。」
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米国時間の4月22日に、バイデン政権が富裕層向けのキャピタルゲイン税を現行の20%から39.6%に引き上げるという内容が発表されました。
これを受けて、同日、上昇していた米国株の主要指数は反落し、NYダウ平均、S&P500、NASDAQの主要3指数はおよそ-1%減少しました。
現状では、増税案は提案にとどまっており、本当に施行されるかという実現性については不明です。
もしもキャピタルゲイン(値上がり益)の増税が決定した場合、将来のリターンにどのような影響を与えるのでしょうか。また日本の個人投資家にはどのような影響を与えるのでしょうか。
米国の資産運用の歴史を振り返ると、税制改革が株式リターンに与える影響は無視できるものではないと言えます。
過去の事例を見ることにより、今回の増税がこれからの資産運用にどのような影響を与えるのか、予測することができるかもしれません。
本記事では、下記4点について紹介いたします。
・バイデン政権の増税計画の概要
・過去の税制改革が株式リターンに与えた影響
・今回のキャピタルゲイン税の増税が資産運用に与える影響
・個人投資家ができる影響の回避策
目次
バイデン政権のキャピタルゲイン税の増税政策
増税政策の背景と概要
日本と比較すると、米国内の所得格差はとても大きいです。
その格差問題を解消するために、現在富裕層に集中している富の再分配をすることを、バイデン政権は検討しています。
バイデン政権は、育児や幼児教育・労働者の競争力強化を実現するための政策に向けて、1兆ドル規模の歳出が計画されており、その財源確保のために標的となったのが、米国の富裕層です。
具体的には、所得が100万ドルを超える富裕層に対するキャピタルゲイン課税の税率を、現行の20%からその約2倍の39.6%に引き上げることが検討されていることが、4月22日の報道で明らかとなっています。
ホワイトハウス当局は、増税案については現在も協議中であるとしており、富裕層に対する控除額の上限設定や、相続増税なども検討されているようです。
増税政策はいまだ不確定な要素を含む
キャピタルゲイン課税の増税案の実現のためには、米国議会で可決されることが不可欠であり、2017年に法人税を35%から21%に低減するなどのトランプ減税を行ってきた野党共和党からの支持はあまり見込めないと予想されています。
現在上院の与野党議席数は同数であることを踏まえると、増税率はバイデン大統領の提案よりも低くなる可能性は高いのではないかと推測されています。
増税策の詳細については28日の議会演説前に発表される予定ですので、本記事もそれに合わせてアップデートを行っていきます。
キャピタルゲイン課税の増税が日本の投資家に与える影響とは
直接的な影響はない可能性が高い
バイデン氏の政策の対象となっているのは米国籍の個人富裕層であるために、日本の個人投資家に与える影響は、現時点の情報を基にすると「ない」と言ってよいと考えています。
一方で、しっかり機能する法律を制定するためには、個人が法人化することによる税逃れをさせないような工夫も必要であると言えます。法人へのキャピタルゲイン課税がどのようになるのか、今後の具体的な法案には注目が必要です。
間接的には大きな影響が生じる可能性がある
短期的なグロース銘柄の値下がり
短期的には、株価の下落が起こると予想されます。
これはキャピタルゲイン課税の増税法案が施行される前手に、利益確定をしておきたいと考える投資家が増えるためです。
この売却圧力は特に直近で大きく値上がりした、ハイテクを含むグロース銘柄が対象になると予想されます。例えばアップルはここ1年で90%以上値上がりしており、テスラは昨年の4月以降に400%の値上がりをしています。
そのため、①含み益が大きくなっている、②キャピタルゲイン課税の増税前、という2つのタイミングが重なっていることもあり、短期的には株価が下落する可能性があると予想されます。
もしかしたら28日の演説内容次第では、大きな株価変動が起こるかもしれません。
高配当銘柄には増税は好都合?
増税はキャピタルゲイン税が対象である一方で、インカムゲイン(配当益)に対する課税については言及されていません。
そのため、グロース銘柄に対しては不安な要素が大きい一方で、高配当銘柄はむしろ有利になる可能性があります。
これは、増税されないために、インカムゲインの価値が相対的に増すために、今まではキャピタルゲインを狙っていた投資家が、高配当銘柄の購入に傾く可能性があるためです。
以上から、特に高配当銘柄に対しては、増税が直接的に株価下落をもたらす可能性は高くなく、むしろ配当の価値が見直され、買いが入る可能性すらあるのではないでしょうか。
歴史的事実:課税制度は株価に大きな影響を与える
実は課税制度は株価チャートに大きな影響を与えてきたことを歴史は示しています。
配当益(インカムゲイン)の税的なデメリット
キャピタルゲインは値上がり益であるために、売却をしなければ運用期間中に課税の影響は受けません。
一方で、インカムゲインについては、配当益として株主が受け取るタイミングで都度都度課税されてしまうために、同じリターンである場合、キャピタルゲインと比較をしてインカムゲインは不利であると言えます(※)。
また、米国の歴史を見てみると、キャピタルゲイン税率と比較をすると、インカムゲイン税率は高かったことも、投資家にとっては配当益が不利な要素の一つであったと言えます。
※課税のタイミングを遅くすることにより、リターンを高めることができることは繰り延べ効果と呼ばれているものです。
投資信託において、分配金を出すファンドと比較をすると、出さないファンドが有利になることも、この繰り延べ効果の影響です。(詳細は過去記事で図解しております。)
そのために、投資家のリターンを高めるために、米国企業は配当利回りを低下させ、その分を自社株買いなどの株主還元策に力をいれるようになりました。
自社株買いでは自社の株式を購入し消却することにより、1株当たりの利益(EPS)を増加させることができます。これにより、株式価値を向上させ、値上がり益を増やすことができます。
長期のデータから見る配当益の変化と株価推移
税的なデメリットを減らすために、米国企業が配当益よりも値上がり益を重視するようになった結果、それぞれのリターンにも変化が生じてきました。
下図は、期間別の過去の平均配当利回りを示しております。
ご覧のように、株主へのリターンを高めるために、株式の配当利回りは大きく減少しています。
そして、減少した配当益の分、上記の自社株買いなどの還元策を通して、値上がり益が上昇してきたことを過去のチャートは示しています。
下の図は『株式投資』から引用したもので、ダウ工業平均の物価調整後の株価チャートを示しています。(右下の図が物価調整前のチャートです。)
1980年までは、インフレ調整後での株価の平均上昇率は1.87%であった一方で、1980年以降は、3%にまで上昇しています。
ここで、1980年で分かれているのは、1978年以降にはキャピタルゲイン税の減税が行われたためです。
この減税の結果、有利となったキャピタルゲインを投資家にもたらすために、企業がインカムよりもキャピタルを重視するようになり、これが1980年以降の株価の上昇率の向上をもたらしたと解釈できます。
つまりキャピタルゲインが税的に有利であったという事実が、配当益のウエイトを低下させ、値上がり益の増加をもたらしてきたと言えます。
歴史から見た時のバイデン増税の影響
以上からも分かるように、税金は株価チャートに大きな影響を与えます。
課税制度が株価チャートに大きな影響を与えうることは、『株式投資』の著者のシーゲル教授も言及しています。
もしも今回、キャピタルゲインのみが不利となる増税が行われた場合、値上がり益を減少させ、配当益を増加させるような株主還元策が行われるかもしれません。
日本の個人投資家ができること
配当益が増加した場合であっても、配当課税を避けながら長期投資をすることは可能です。
それを実現するのが分配金なしの投資信託です。emaxis slim 米国株式(s&p500)はその代表的なファンドの一つでしょう。
分配金なしの投信であれば、企業からの配当金はファンド内で再投資が行われるために、非課税で長期運用を行うことができます。
今回のバイデン氏のキャピタルゲイン税の増税が実施されたとしても、日本の投資信託を介した投資を行っていくことにより、今後も米国株の高いリターンの恩恵を受けることができるのではないかと、著者は推測しています。
まとめ
今回はバイデン氏のキャピタルゲイン課税の増税に関して、現在分かっている事実を紹介したうえで、増税が日本の投資家に与える影響について考察いたしました。
過去のチャートを見てみると、税制改革は値上がり益、配当益両者に大きな影響を与えることが示されています。
バイデン氏の増税が、もしかしたら株式リターンのバランスをゆがめる可能性は推測できます。どのような法案が施行されるのか、注目していきたいと思います。
一方で、キャピタルゲインとインカムゲインの比率が変わったとしても、トータルのリターンは大きくは変わらないことを歴史は示しています。
そのため分配金を出さない投資信託を介して運用を行っていけば、個人投資家にとって、今回の増税は大きな問題とはならないと考えています。
本記事が皆さまの良い投資に繋がりますように!
★今回の参考文献★
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